はじめてのドリーム号

U.R.L. 2003年12月1日月曜日公開


 交通費は安いにこしたことはない、長距離乗るならなおさら、ということで、京都から東京へ行く時は極力「青春18きっぷ」が使用できるシーズンを選んでいました。現在でも基本的にはそうなのですが、そうは言っていられないときもあります。

 そんなとき、鉄道を趣味とする者の頭に真っ先に思い浮かぶ選択肢は二つ、速さをとるなら「新幹線」、安く行くなら夜行普通列車を使った「在来線」。新幹線の速さは魅力ですが、金券屋で「新幹線ビジネスきっぷ」や「新幹線回数券」のバラ売りを買ったとしてもやはりそれなりの値段であるので、片道だけ使うことは考えても、往復使うのは控えたいところ。一方の在来線は、「青春18きっぷ」シーズンをはじめとして何度も利用しているので、趣味的に新味に欠ける上、今さら普通運賃を払ってまで「ムーンライトながら」に乗らなくても……と、思わないではありません。

 そこで浮上した第三の選択肢が、前々から気にはなっていたものの、使う機会がなかった「夜行高速バス」。近年「夜行高速バス」は運行会社もルートも多彩になり、自分の移動区間により適した路線を選択できる可能性高くなっています。肝心の運賃も、在来線に乗り通すのと同等か、場合によっては安くつく可能性もありそうです。いい機会なので、はじめて「夜行高速バス」を利用することにしました。

 ただし、今回は夜行高速バス初乗車ということで、肌に合わず疲れが残っても困るので、とりあえず往路のみ夜行高速バスを使うことにしました。


どれにしようかな

 先にも触れましたが、最近の高速バスは新路線開設が相次いだことで、運行会社もルートも多彩になり、乗りたいところ・行きたいところにあわせた選択がより一層可能になっています。また、割安な運賃設定の便や、昼行便など、選択肢の数だけでなく幅も広がってきています。

まずは、安さで選ぶ

 やはり真っ先に目が行くのは、割安な運賃設定の便。主なものとして、「昼特急」(西日本JRバスJRバス関東)、「青春ドリーム」(同)、「カジュアル・ツインクル」(近鉄バス)が挙げられます。このうち「昼特急」はその名の通り昼行便、「青春ドリーム」と「カジュアル・ツインクル」は夜行便です。

 運賃は、関西〜東京方面の「昼特急」が片道6,000円・往復割引10,000円、「青春ドリーム」は片道5,000円(往復割引なし)、「カジュアル・ツインクル」は片道4,800円(同)と、一般の夜行高速バス(大阪〜東京で片道8,610円)と比較してかなり割安。特に「青春ドリーム」や「カジュアル・ツインクル」については、関西から東京方面へ向かう場合に限れば、在来線の夜行普通列車を利用する場合に必要となる「青春18きっぷ」2回分(1回あたり2,300円相当×2回)と「ムーンライトながら」の指定席券(閑散期以外510円)を買うよりむしろ安いぐらいです。バス乗り場までのアクセスにかかる費用を考えると、必ずしもトータルで安いとは言い切れないとはいうものの、この値段設定は心動かされるものがあります。

 しかし、車両に目を向けると、一般的な夜行バスはリクライニングの深い3列独立シートなのに対して、「青春ドリーム」や「カジュアル・ツインクル」は、観光バスと同じような4列シートの車両が使われるなど、やはり値段には値段なりの理由があります。いつでもどこでも、どんな環境でも寝られる人には問題なくても、個人的には「幅の狭い、リクライニングの浅い」4列シートは避けたいところ。かつてスキーバスで全く眠れなかった経験を持つ者として、夜行高速バスに対して、初乗車にして良くない印象を持つのも本意ではありません。

 では昼行便の「昼特急」はどうかというと、一般的な夜行高速バスの車両を昼間にも有効活用しようと設定されたバスなので、座席は3列独立シートです。それゆえ、昼行便ではあるものの車中では寝て過ごす人も多いと聞きます。値段と設備のバランスを考えると、ヒマさえあればお買い得なバスだと思います。しかし、今回は午前中に東京に到着しないといけないという制約があり、一方で最初に東京に到着する昼特急である「東海道昼特急大阪2号」ですら東京駅には13時51分の到着予定であることから条件が合わず、パスすることにしました。

 ちなみに、路線バスとしてではなく、団体旅行扱いで運転される夜行バスも関西〜関東には走っており、なかには4列シートの観光バス使用ながら片道4,300円とか、3列シート車を使用しつつ片道6,000円というような夜行バスもあります。ただ、いくら「まずは、安さで選ぶ」とはいっても、そこまで「安かろう、悪かろう」の度が過ぎると、個人的にはかえって乗る気が失せてしまいます。

バス会社で選ぶ

 このサイトをご覧になられた方はお分かりいただけると思いますが、私自身はかなりの阪急ファンです。京都方面を中心に、阪急電車にも阪急バスにも興味があります。逆立ちをしても阪急電車で東京には行けませんが、阪急バスなら梅田の阪急三番街バスターミナルを起点に東京方面への路線が運行されています。次に目をつけたのは、この阪急バスの夜行高速バスです。

 阪急バスには、東京方面に向けて池袋、上野(東京ディズニーランド)、新宿、浜松町・品川への4路線の夜行高速バスがあり、阪急三番街バスターミナルから乗るぶんには、山手線上の各ターミナルへはどこへ行っても片道8,610円です。往復割引運賃については各路線で若干の違いがありますが、今回は片道のみ乗車する予定なので、それについては考えないこととします。車内の設備は、いずれも3列独立シートで、各路線の車両に特に大きな違いはなさそうです。

 今回の目的地は浜松町となっているので、「大阪−浜松町・品川」の便が最適のように思えますが、夜行高速バスは朝早くに到着するため、どこかで時間を潰さなくてはなりません。それならば、久々に私のお気に入りの鉄道である京王線に乗るため、乗換えに便利な「大阪−新宿」の方が好都合かもしれません。未乗区間が多い西武池袋線に乗ってみるなら「大阪−池袋」も良さそうです。

 東京方面に向かう阪急バスの夜行高速バスは、阪急沿線にある名神茨木・名神高槻・大山崎の各バス停から乗ることができます。いずれも名神高速道路上やインターチェンジ内に設置されたバス停で、路線バスなどを使ってのアクセスは可能ではあるものの、一般的にあまり便利とはいえない場所にあります。ただ、私が住んでいるところを基準に考えると、大山崎バス停までは路線バス一本で行けますし、仮に歩いても30分とかからないなど、便利とはいいがたいものの、さほど不便なわけでもありません。使おうと思えば十分に使えます。阪急三番街バスターミナルから乗車するよりも、夜行高速バスの運賃そのものが少し安く、アクセスの費用も含めると片道で800円ほどの違いが出るなど、運賃面でも少し魅力的です。家を出る時間にも違いが出ます。

 しかし、調べているうちに大きな問題にあたりました。乗車する予定の11月14日(金)を含む数日間は、名神高速道路の吹田IC(インターチェンジ)〜栗東IC間が集中工事のため夜間通行止めになる日だったのです。このため、夜行高速バスは迂回運転することになり、この区間内にある名神茨木・名神高槻・大山崎の各バス停には停車しないことになってしまいました。阪急三番街バスターミナルから乗車することはできますが、迂回区間が長いだけに、到着時刻が大幅に遅延することが十分に考えられます。

 いくら「朝早く到着したら時間を潰さなくてはならない」とはいっても、大幅に遅延した夜行高速バスの中にカンヅメにされることは望みませんし、東京の鉄道に久しぶりに乗ってみたいという思いもあったので、こちらもパスすることにしました。大山崎発もダメ、大阪(梅田)発もダメとなれば、選ぶべきは京都駅発の夜行高速バスに絞られます。

結局、元祖を選ぶ

 京都駅発の夜行高速バスを選ぼうとすると、一気に選択肢が少なくなります。調べてみたところ、西日本JRバス(と共同運行会社)の「ドリーム京都号」「ニュードリーム京都号」「ハーバーライト京都号」か、京阪バス(と共同運行会社)の渋谷・新宿、上野(東京ディズニーランド)、八王子方面行ぐらいしか見あたりません。

 車両はいずれも3列独立シートですので、大差なし。それぞれの公式サイトを見る限りにおいては、唯一「ハーバーライト京都号」にはレッグレストがなさそうなのが、違いといえば違いでしょうか。西日本JRバスの「ハーバーライト京都号」や京阪バスの「京都〜八王子」は山手線上のターミナルに発着しませんが、横浜は東横線の、八王子は京王線のターミナルであり、いずれもお気に入りの鉄道なので、時間潰しにはもってこい。検討に値します。

 ここで決め手となるのが、やはり運賃。基本的には、距離が短い西日本JRバスの「ハーバーライト京都号」や京阪バスの「京都〜八王子」の運賃が安いのですが、金券屋で回数券のバラ売りを探すと、そもそも京阪バスについてはバラ売りしているのかどうかすら分からない状態、西日本JRバスについては「ハーバーライト京都号」よりも「ドリーム京都号」や「ニュードリーム京都号」の方が安いぐらいでした。

 ちなみに、「ドリーム京都号」の回数券には「通年型」と「平日型」の二種類があります。「平日型」の方が少し安いのですが、金曜日・土曜日・休日・休前日には使用できないとのことで、金曜日の乗車となる今回は「通年型」を使うことになります。ちなみに、「ニュードリーム京都号」の回数券には「通年型」しかなく、値段は「ドリーム京都号」の「通年型」回数券と同額です。

 値段的には、東京駅着の「ドリーム京都号」でも、新宿駅着の「ニュードリーム京都号」でも同じです。一時は京王線への乗り換えに便利な「ニュードリーム京都号」に傾きかけたのですが、真っ暗なうちから京王線に乗ったところで写真も撮れないので、日が昇りだすまでは、地下でつながった東京駅近辺の地下鉄駅(大手町・東京・二重橋前・日比谷・有楽町など)でも巡ろうかと思い、「ドリーム京都号」に乗ることにしました。

 ということで、色々と調べて探したわりに、回りまわって行き着いたところは、夜行高速バスの元祖「ドリーム号」ということになりました……。


座席を指定する

 京都駅の近くにある金券屋でバラ売りされていた「ドリーム京都号」の通年型回数券を買ったところ、値段は一枚7,350円。片道の運賃が8,180円ですから、それより830円安い計算になります。830円あれば、十分に都内での移動費用の足しになります。割引率にすると1割強、まぁまぁ悪くない割引率です。

 一方、割安な夜行便である「青春ドリーム」と比較すると、約5割増の値段。といっても、差額は2,350円。「青春ドリーム」の2+2シートがどちらかというと昼行向きの設備であるのに対して、「ドリーム号」の独立3列シートは夜行向きの設備ですから、差額の2,350円を「なるべく快適に寝るための費用」と考えれば、納得のいかない額ではありません。

 行きは「ドリーム号」、帰りは新幹線を利用するならば、「ドリーム&ひかり」を利用する手もあります。新幹線では「ひかり」または「こだま」の自由席が利用できますが、指定席への変更や「のぞみ」への乗車はできないとのこと。値段は、京都発着ならば18,960円。検討はしたのですが、金券屋では「ドリーム京都号」の通年型回数券のバラ売りが一枚7,350円で、「新幹線ビジネスきっぷ(大阪市内〜東京都区内)」のバラ売りが一枚11,900円で売られており、合計すると19,250円。「ドリーム&ひかり」との違いは290円。「ドリーム&ひかり」の場合、帰路に京都〜長岡京の普通運賃(210円)を払う必要があるので、結局80円しか違わないことになります。「新幹線ビジネスきっぷ」が指定席を利用できる(「のぞみ」への変更もできる)のに対して、「ドリーム&ひかり」は「ひかり」「こだま」の自由席しか利用できないことから、実質的には「新幹線ビジネスきっぷ」の方が安いと考え、「ドリーム&ひかり」はパスすることにしました。

金券屋の、ありがたいサービス

 金券屋で手渡された回数券は、「(自)京都駅」にて「平成15年10月17日」に発行されたもの。正味6ヶ月間ある有効期限のうちこの時点ではまだ半月ほどしかたっていませんから、とても不要になって持ち込まれた回数券を安価に引き取ったものとは思えません。なにより、回数券そのものが、いま切り離したところであるかのようにパリッとしています。となると、金券屋が直接「(自)京都駅」で買い付けたものなのでしょう。

 「ドリーム京都号」の通年型回数券は、4枚つづりで28,960円ですから、1枚当たり7,240円。金券屋の販売価格は1枚7,350円。差額が金券屋の儲けだとすると、1枚当たり110円。それだけ「薄利多売」が成立しているのか、安くしないと売れないのか。もしかすると回数券も大量に購入するとさらにいくらか割り引かれたりするのかもしれませんが、なにはともあれ、使う私にはありがたい価格設定です。

 その金券屋では、もし満席で座席指定が受けられなかったなどの理由で回数券が不要になれば、買ったその日のうちに回数券とレシートを持参することで全額払い戻してもらえるとのこと。既にJRバス関東の公式サイトで乗車当日の「ドリーム京都号」に空席があることを確認していたので、今回払い戻しを受けることはなさそうですが、座席の有無に対するリスクを店側で負ってくれるような「売りっぱなし」ではないサービスは、利用者にとってはありがたいものです。もちろん、リピーターを増やそうという意図があってのことだとは思いますが……。金券屋を出たその足で、座席指定を受けるため京都チケットセンターに向かいました。

当日分は、満員御礼

 京都チケットセンターには、西日本JRバスのエリアと京都市交通局のエリアがあります。向かって左側にある西日本JRバスのエリアには窓口が3ヶ所ありましたが、それぞれに受け持ちの路線が決まっているようで、主に高速バスを受け持っている1ヶ所にだけ列ができていました。どうやら、京都チケットセンターではその窓口にしかMARS(マルス)が設置されておらず、他の窓口では高速バス等の座席指定は受け付けられないようです。MARSは、JR西日本の「みどりの窓口」でよく見かけるマウスで操作するタイプのものでした。

 受け付け待ちの列の流れはあまり良くなく、むしろ列は長くなる一方。あと何便か残して名神ハイウェイバスは全便満席となっており、その旨を別の窓口の係員が口頭で告げると、何人かが残念そうに列から離脱していました。座席指定さえ確保できれば、渋滞の可能性はあるものの、運賃は在来線と同等で、しかも確実に座れて、途中の乗り換えは無く、大きな荷物はトランクルームに預けられる高速バスは、京都〜名古屋間では手頃な移動手段なのかもしれません。トランクルームに、大きなキャリーバッグや大量の土産物、折りたたまれたベビーカーなどが積み込まれているのを見ると、特に鉄道に足らないのは荷物置場だと感じます。航空機・高速バス・自家用車などにはたいてい専用の荷物置場があるのと比較すると、鉄道のそれは空港アクセス用の車両やスキー列車などでしか見られず、一般的に貧弱です。

 しばらくして、直前の若者の番になりました。申し込みの内容を聞いていると、当日の「青春ドリーム」を希望している様子。当日分の空席状況を知らせるボードにも「満席」の赤い札が付けられていましたが、改めてMARSで問い合わせてみても、やはり全ての「青春ドリーム」が満席。週末の「青春ドリーム」の予約が他の夜行高速バスよりもいち早く埋まってしまう様子は、JRバス関東の公式サイトにある「ハイウェイバス空席状況」を見ても分かりますが、「安い夜行バスがある」という事実は知られていても、「週末の便は早く予約が埋まる」という事実はあまり知られていないようです。気の毒なことに、当日は「ドリーム号」も全便満席となっており、キャンセル待ちに望みを託すしかないその若者は肩を落としていました。

「アタリ」か「ハズレ」か

 さて、ようやく私の番がまわってきました。先ほど買ったばかりの回数券を差し出して、11月14日(金)の京都発「ドリーム京都2号」の座席指定を依頼。係員がマウスで操作しはじめ、しばらくするとあっさり発券されました。全席禁煙ですから、禁煙・喫煙の希望を聞かれないのはともかく、窓側を希望するかどうかぐらいは聞いてくれるのかと思っていたのですが、全く何も聞かれず。座席の割り振りは、基本的に機械任せとなるようです。

 手渡されたのは、「みどりの窓口」で発券される「新幹線指定券」などと全く同じ台紙・サイズ・様式の「バス指定券」。区間が駅名ではなく、「京都駅烏丸口→東京駅八重洲口」とバス停名になっているのが、高速バスを利用したことがない者にとっては目新しい点です。ふと左下に目をやると「(自)京都」の文字が。私が買った回数券の発行個所でもある「(自)京都駅」というのは、この京都チケットセンターのことのようです。

 その「バス指定券」によると、割り当てられた座席は「1号車2番C席」。これまで夜行高速バスに乗ったことがないので、この座席が「アタリ」か「ハズレ」か判断できないのですが、続行便になればなるほど車両のグレードが下がる可能性が高いと聞きますから、「1号車」が割り当てられた点については「アタリ」と考えていいのでしょう。また三列シートの「C席」ですから、窓側の席であることもおそらく確定です。「2番」というのが微妙なところですが、少なくとも「大ハズレ」の席ではなさそうで、少し安心しました。


乗る・寝る・降りる

 当日、出発前に色々と手間取ったため、長岡京21時37分発の普通(明石〜高槻間快速)野洲ゆきに間に合うのがやっと。ダイヤどおりに走って京都まで10分強かかるので、22時ちょうど発の「ドリーム京都2号」に乗るにはギリギリの列車です。JR西日本のダイヤは、たまにとんでもなく乱れることがあるので、全く安心はできません。駅の案内装置に「遅れ」の欄が常設されており、そこに「約○分」と表示されていることは珍しくありません。

 この日は運良く(?)ダイヤの乱れはなかったようで、列車は定時でやってきました。その前にICOCAで入場。東京で使うために財布に入れていたSuicaイオカードを抜いて、改札機にタッチ&ゴー。エレベータを降りてホームに着くと、入線してきたのは湘南色の113系でした。なにもこんなときに113系でなくても……と思っていると、湘南色なのは前4両だけで、後ろ4両はリニューアル車。京都駅で降りるときの都合も考えて、リニューアルされた後ろ4両に乗りましたが、転換クロスシート化されたことで座席数は大幅に減少しており、結局京都まで着席できませんでした。

 そうでなくても足が遅い113系は、性能をフルに発揮しながらもノンビリとしたペースで走り、長岡京から京都までたっぷり11分かかりました。2番線に到着したのが、21時48分。そろそろ「ドリーム京都2号」が乗り場に来る時間です。急いでエレベータに乗り、コンコースへ向かい、西口の改札機に財布をタッチして出場。こういうときにICOCAは便利です。もっとも、改札機に回収される切符のほうが、財布をしまう手間が省けて楽かもしれません。

 JR京都伊勢丹の前を通ってエスカレータを下りると、「ドリーム京都2号」はまだ乗り場には来ていない様子。トイレを済ませておこうと思い案内板を見ると、改札外のトイレは中央口の近くにあるとのこと。そんなことなら、最初から中央口にむかえばよかったと思いましたが、仕方ありません。急いでトイレを済ませ、乗り場に戻ると、ダブルデッカーのバスが2台並んで停車しており、既に改札が始まっていました。

1号車2番C席

 停車しているのは、1号車がJRバス関東の車両、2号車が西日本JRバスの車両。ナンバーが「足立200」や「京都200」といった比較的新しい車両で、車種はどちらも三菱ふそうのエアロキング……らしい。ダブルデッカーが2台並ぶと、さすがに迫力があります。指定されたのは「1号車」なので、JRバス関東の車両のほうにむかって伸びた列に並びます。

 長く伸びた列はなかなか前に進まなかったので、東京に着いてからのことを考えて、財布から抜いたSuicaイオカードと、財布の中にあるICOCAを入れ替え。SuicaイオカードとICOCAが同時に改札機に反応すると「枚数超過」になるからですが、いちいちこんなことをしなければならないようでは、ICカードは便利なのか不便なのかわかりません。なんとかしろよと思っているうちに、やがて順番が回ってきて、ホッチキスで留められた回数券とバス指定券を乗務員に手渡すと、両方にパンチを入れて返してくれました。

 大きな荷物を預けようとトランクにむかうと、車体の大きさと比べて小ぶりで、はたして全員分の荷物が納まるのかというサイズ。1階部分とエンジンルームの間に設置されたトランクルームは、より定員が少ないスーパーハイデッカーのそれよりも、かなり小さなサイズに見えます。サーブボードや折りたたみ自転車がお断りになっている理由がわかります。

 荷物を預けて、車体中央の出入口から乗車。すぐ右手にある階段を上がると、2階に達します。2階の車内は、進行方向に向かって左側からA席・B席・C席の順に並んでおり、A席とB席は少し間を空けて隣同士、B席とC席の間が通路になっています。指定されたのは「C席」でしたから、窓側であり通路側でもあるという、完全に一人がけの座席が割り当てられたことになります。

 通路を前に進むと、前から2列目が「2番」の席です。1番の席を見てみると、すぐ前が壁になっており、あまり足を伸ばせなさそうな様子。2番から後ろの席は、一部を除いて直前の座席の下に足を伸ばせますから、1番の席でなくてよかったようです。また、騒音源となるエンジンが後ろの方にあるので、それから遠い前方の席は比較的静かです。それらのことを考えると、「2番」は悪い席ではなかったようです。

 室内を見回してみると、利用者は若者が多いようです。あと少ないながらも目立ったのが、中年女性の一人旅。親子4人連れも一組いました。

 バスのダブルデッカーは、全高3.8mの車体に二階分のスペースを作っているため、各階の天井は低く、真っ直ぐ立って歩けません。この客室スペースの天井の低さといい、先ほどのトランクルームの狭さといい、定員確保が最重視されている印象を強く受けます。鉄道のダブルデッカーも天井の低さを感じますが、バスのダブルデッカーはそれ以上で、座っていても圧迫感を感じるほどです。何より問題なのが、客室内には手荷物すら置く場所がないこと。荷物棚らしきものはありますが、高さも奥行も不足しているため、脱いだ上着をたたんで置いておくのがやっとです。先に「鉄道の荷物置場は一般的に貧弱だ」と書きましたが、それに勝るとも劣らない貧弱さ。それを知らずに、トランクに入れるほどではないと思った手荷物を持ち込んでしまい、どこに置いていいのやら困ってしまいました。

定時発車〜一度目の休憩まで

 発車時刻までに改札を終え、乗務員による放送があったのち、バスは定時に発車。バス停から離れるためハンドルが右へ切られたバスのクラッチがつながった瞬間、車体がグラッと左右に揺れます。ダブルデッカーの二階部分だからなおのこと。その瞬間、自分が「クルマ酔いする体質だった」ことを思い出しました(^^;。この状態が続くとマズイかも……と思うも、バスは京都駅前のバスターミナルを右折で出て、塩小路通から烏丸通へと左折し、さらに烏丸通から五条通(国道1号線)へ右折と、車体を左右に振り回しながら京都の市街地を進んでいきます。なんとかそれを耐えていると、そこから先は交差点での直角カーブもなく、安定した走りになりました。

 消灯されるまでは、クルマ酔い防止も兼ねて、既に閉められていたカーテンを少し開けて外を眺めようと思っていたのですが、車内の暖房が効きすぎていて窓が結露しはじめ、しばらくすると全く外が見えなくなってしまう始末。窓の拭き掃除をする気はないので、そのまま諦めてカーテンを閉じ、車体の揺れに身を任せていました。自分でもクルマを走らせたことがある道だけに、揺れ方を感じるだけでどのあたりを走っているのか、おおよその見当はつきます。

 室内灯が明るいうちにリクライニングやレッグレストの調整を行なっておこうと、後ろの人に一声かけるため振り向いたところ、既に目を閉じて眠っておられる様子。遠慮なくリクライニングを最大限に倒し、備え付けのスリッパに履き替え、フットレストを出し、レッグレストを半分ほど上げて、就寝体勢に入る準備をはじめます。レッグレストの幅が座席の幅よりも狭く、足が左右に落ちそうになるのが気になりましたが、その一方で、レッグレストを上げるとその下に手頃なスペースができることを発見。置き場に困っていた手荷物はここに収めることにしました。

 座席の調整を一通り終えたところで、持参した空気枕をふくらませて座席に身を預けると、クルマ酔いの症状はキレイに消え、楽になりました。バスはあまり赤信号にも引っかからず順調に進み、山科区(京都市)に入って国道1号線が東海道新幹線と並走するあたりで消灯。小さな通路灯を除いて完全に消灯され、カーテンも正面・側面ともに全て閉じられているため、車内はほぼ真っ暗な状態になります。一部でカーテンのたるんだ部分などから光が漏れてくるところもありましたが、さほど気にはなりませんでした。

 当日は、名神高速道路の吹田IC〜栗東ICが夜間通行止めだったため、京都東ICへは入らず、そのまま国道1号線を東進。カーブなどから判断して、国道1号線と京阪京津線が並走するあたりの見当をつけていると、4両編成の電車とすれ違う音が聞こえました。お互い軽快に走っているので、一瞬の離合です。国道1号線ながら片側一車線の区間に入っても特に渋滞もなく、バスはスムーズに進みます。途中、JRの琵琶湖線(東海道本線)と並走する区間でも、列車とすれ違いましたが、さすがにこちらは編成が長いので、一瞬の離合とはなりませんでした。いずれも通常ならこのあたりを「ドリーム京都号」が走行することはなく、普段はまず実現しない離合です。

 京都駅烏丸口を発車してから一般道を1時間強走ったところで、バスが左へと旋回しはじめました。栗東第二ICに到達です。ここを入って、栗東ICの料金所までしばらく走ったのち、一旦停車して名神高速道路に合流。これまで本来走るはずの高速道路の代わりに一般道を走ってきた分の遅れを取り戻すべく、回復運転が始まりました。といっても制限速度以内の様子。もともと夜行高速バスのダイヤは余裕を持って設定されているため、制限速度ギリギリで走り続ければ、十分に回復運転になるようです。

 順調に1時間弱走ったところで、減速し始めました。左へ右へとハンドルを切って、最後に大きく左に曲がって停止。車内放送によると、休憩のために多賀SA(サービスエリア)に到着したとのこと。車内灯が点き、出入口が開くと、それまで静まりかえっていた車内がにわかにざわつき始めました。

一度目の休憩〜二度目の休憩まで

 多賀SAでの休憩時間は、約10分。まだ日が変わる前なので大半の人は起きており、その多くが車外へ出たようです。つられて席を立ち階段を降りると、外気は冷たく、それまで暖かい車内にいたことで緩んでいた神経が一気に引き締まるのがわかります。さすがに深夜時間帯だけあってクルマは少なく、駐車スペースに余裕があります。また大型車、特にトラックが多いので、小型車用の駐車スペースがほとんど空いているのも、昼間とは異なる光景です。

 せっかく外に出たので、SAの建物の中へ。売店などは営業を終了しており、また人が少ないので、雰囲気は落ち着いています。無料のお茶をいただこうと、お茶の機械のほうへ。ボタンを押して紙コップを出し、緑茶のボタンを押すと、熱湯かと思うほど熱いお茶が出てきました。もともと猫舌であることもあって、こういう熱いお茶は苦手です。バスに乗り遅れると大変なので、熱いのを我慢して飲み干すと、口の中がヒリヒリしてきました。

 短い休憩時間が終わりに近づいたので、紙コップを所定の場所に捨て、トイレを済ませて、バスに戻ります。乗車するときにふと車内を見ると、一番最後に予約が埋まる一階席も満席のようです。階段を上がり座席に戻ってしばらくすると、乗り遅れがないかチェックするため、乗務員が乗客数のカウントにきました。乗客全員が席に戻っていたようで、すぐに出入口が閉まり発車。それと同時に室内灯が消され、再び車内は真っ暗になりました。

 バスは本線車線に戻り、快調に走ります。そろそろ寝ようかと思ったものの、先ほどのお茶のおかげでまだ口の中がヒリヒリしており、目をつぶっても気になります。しかも、普段は緑茶を飲むことがないので、緑茶を飲んだら寝付きが悪くなることを忘れていました。なにより、熱いお茶で暖まった体は、暖房がきつく効いた車内をさらに暑く感じさせます。お茶を飲んだのは大失敗でした……。

 回復運転は続いているようで、バスは順調に走行。橋桁の継目を踏むたびにその振動が伝わり、車体が軋みます。舗装が良くない区間があるのか、時々「ズシシシーーーン、ズシシシーーーン」と車体が大きく振動するのが気になりますが、乗り心地そのものは悪くありません。それが一段落すると、安定した走りに戻り、ウトウトしてきました。

 気がつくとバスが減速し始めており、目が覚めました。どうやら加速よりも減速のほうが睡眠には影響するようです。本線から外れて左へカーブし、どこかのSAに到着した様子。放送はなく、車内灯は消えたまま。出入口も開かず、ただ停車しているだけ。時計を見ると、多賀SAを発車してから1時間強たっており、乗務員が休憩をとるための「運転停車」のようです。カーテンに頭を突っ込んで周囲を見回しても、ここがどこのSAなのかわかりませんでした。

 10分ほど停車したのち、静かに発車。しばらく外を見ていると、反対車線の案内標識に「上郷SA」の文字が。先ほど停まっていたSAは、上郷SAだったようです。あとで調べてみると、多賀SA〜上郷SAは111.9kmとのこと。この距離を1時間強で走ったことから、バスは100km/hを維持して走り続けていたことになります。反対車線を走っているのも、このバスを追い越していくのも、大型トラックばかり。暗くて景色も見えないので、カーテンから引っ込んで、再び目を閉じました。

 気がつくと、また減速している様子。カーテンに頭を突っ込んで外を見てみると、道路幅が広くなっており、停車したところは本線料金所。一瞬停車して、そのまま走り出します。首を引っ込めて、しばらく走っていくと、今度は左へ90度カーブしていき停車。かすかに「料金は……」という機械の声が聞こえます。料金所を出たようです。さほど走らないうちに、また停車。今度は走り出す気配がありません。再びカーテンに頭を突っ込んで外を見てみると、先ほど出た料金所が目の前に見えます。「三ヶ日IC」。ここで、西日本JRバスの乗務員から、JRバス関東の乗務員へと、乗務員交代が行なわれます。

 ここでも10分ほど停車して、目の前に見えている三ヶ日ICに向かって動き始めました。料金所で一旦停止して、再び東名高速道路に進入。左へカーブして本線に復帰しますが、先ほどまでのペースには戻りません。これまでのバスの遅れは西日本JRバスの乗務員が取り戻したようで、ここから先を担当するJRバス関東の乗務員は、いつものペースで走っているようです。車内にはゆったりした空気が漂いはじめ、睡眠モードに入りました。

 ギクシャクした振動で目を覚ますと、どこかに停まっている様子。例によってカーテンに頭を突っ込んで外の様子をうかがってみると、大きく右へカーブした道路上で停車しています。また、前後に数台づつの夜行高速バスが並んで停車しています。休憩は休憩でも、これまでのSAでの休憩とは明らかに様子が異なります。先頭のバスが発車すると、そのぶん前へ。さっきのギクシャクした振動は、クラッチをつなぐ時のものだったようです。そうすると「静岡IC」の文字が見えてきました。どうやらここは東名静岡バス停(料金所の内側)で、夜間は発着する高速バスがないことから、JRバスの夜行高速バスが乗務員の休憩場所として使用しているようです。

 しばらく停車したのち発車。料金所から入ってくる道路と合流し、東京方面への進入路へと車線変更。本線へ復帰。車の流れは順調そのもので、ほどなく対向車線には「静岡IC 2km」の案内が見えてきました。高速道路の「速さ」を数字で実感させてくれます。カーテンから頭を引っ込めたら、さすがに眠くなってきました。ほどなく寝てしまったようです。不意に周囲が明るくなり目を覚ますと、車内放送が足柄SAへの到着と休憩時間を告げています。ここで、乗客にとって二度目の休憩が行なわれます。

二度目の休憩〜到着まで

 これまでほぼ1時間毎に乗務員の休憩は行なわれてきましたが、乗客の休憩は多賀SA以来これが二度目です。室内灯の点灯で目が覚めたのでしょうか、それともこれまで眠れなかったのでしょうか、一度目の休憩の時ほどではありませんが、結構な数の乗客が車外へ出ました。一緒に外へ。

 SAというと、小型車の駐車エリアの後ろに大型車の駐車エリアがあってトイレや売店まで距離があるというイメージがあったのですが、足柄SAはトイレのすぐ前に大型車の駐車エリアがあるので便利です。そのためか、夜行高速バスが同じような位置に固まって停車し、それぞれ休憩しています。足柄SAで休憩している夜行高速バスはたいてい東京駅行なので、間違わないように自分のバスに戻らなければなりません。

 ところが、一つ困ったことに、ドリーム号の車外にある行先表示機には、「ドリーム号東京駅」や、単に「東京駅」とだけ表示されているため、同じような表示が出ている他のバスとの区別が付きにくく、何系統ものドリーム号が一斉に休憩しているSAでは、自分のバスに戻るのにあまり役に立ちません。LED式の表示機の場合、多様な表示が可能なはずなので、せめて「ドリーム京都2号 東京駅行き1号車」ぐらいはスクロールせずに表示しておいてほしいものです。

 あまり親切ではない行先表示機はアテにできないので、さしあたりナンバープレートを記憶するのが自衛策となります。乗ってきたバスのナンバーが「・536」であることを確認。特に必要は感じませんでしたが一応トイレを済ませて、建物の中へ。一回目の休憩のときの反省から、無料のお茶には手を出さず、体をほぐして軽食コーナーの椅子に座っていました。リクライニングが深いとはいえ、バスの座席はやっぱり座席。ベッドではありません。座り続けていると、思いのほか疲れます。熟睡しているのに無理に起きる必要はありませんが、寝られない時は、窮屈な車内から離れられられることもあって、休憩時間は貴重です。

 最後の休憩は少し長く、15分ほどありました。乗客全員が乗車しているかどうかを乗務員が確認したのち、出入口が閉じ、室内灯が消え、出発。ここから先は乗務員の休憩もありませんので、次の霞ヶ関バス停までノンストップです。定刻に到着するとしても約1時間30分ほどかかりますので、短い時間ですが最後にゆっくり一眠りすることとして、目を閉じました。

 眠りが浅いのか、また減速を感じて目が覚めました。今度は何があるのかと思って、カーテンに首を突っ込んでみると、目の前にあらわれたのは「東京料金所」。東名高速道路の走行も、あと少しで終わりです。料金所で一旦停止して、再び走り出すと、しばらくしてクルマの流れが悪くなりました。終点を目の前にして渋滞に巻き込まれるとは……と思っていたら、今度は「用賀料金所」があらわれました。ここから首都高速道路を走ります。

 東名高速道路とは違って、首都高速道路は制限速度が低いので、明らかにペースが鈍ります。とはいえ、用賀料金所といえば、鉄道では東急田園都市線の用賀駅すぐ近くですから、渋谷は目前、霞ヶ関までもそれほどの距離はありません。仮に渋滞に巻き込まれても、大幅に遅延することはないと考えても差し支えなく、長い旅路を終え、ようやく目的地に近づいてきた実感が湧きます。

 しばらくすると室内灯が点き、まもなく霞ヶ関バス停に到着する旨の放送がかかりました。熟睡していても、ここで起こしてくれる(?)ようです。短いトンネルを抜けると、バスは停車しました。霞ヶ関出口を出て、右折するため信号待ちをしているようです。久しぶりに直角にターンすると、すぐ霞ヶ関バス停。降りる場合は降車ボタンを押すように乗務員が案内していますが、この日は誰も降りず、通過しました。

 その後、国会通り・日比谷通り・鍛冶橋通り・外堀通り・永代通りと経由し、降車専用の東京駅日本橋口バス停に到着。時刻は午前5時47分頃で、定刻よりも10分ほど早く到着しました。これで、ドリーム号の旅は終わりです。出入口から降りる際にチケットは回収され、トランクに預けてあった荷物を受け取って、東京駅日本橋口バス停をあとにしました。


感想

 夜行高速バスであるドリーム号に乗車して、これだけ色々なことを書いているということは、ようするに「ほとんど寝てない」ということですから、疲れました(^^;。初乗車ゆえの興味や関心もあって、寝ずに起きていた部分が無きにしも非ずですので、また乗車する機会があればもう少し車中で寝られそうかなとも思います。

 乗り心地は決して悪くありませんし、車酔いする人には気になるバス特有のイヤなニオイもほとんど感じませんが、二階席ゆえの揺れの大きさと、減速時に睡眠を妨げられる傾向にある点については、その感じ方に個人差があるとはいえ、バスの弱点である印象を持ちました。一方、座席が各々独立していて隣の人に気を使わなくてもいい点や、乗ってしまえば終点まで直行できる点、車内での治安に対してあまり不安を感じずにすむ点は、夜行高速バスの良い点であると感じました。

 新幹線や飛行機と比較するのは酷ですが、夜行高速バスには値段以上の価値はあるというのが、今回の全体的な印象でした。

 このページが、これからはじめてドリーム号に乗られる方に、少しでも参考にしていただける内容であれば、幸いです。